コラム

北向きの土地の活かし方と注意点

こんにちは、ハウジング山一です。

土地選びの際、「北向き」は東西南北のなかでも一番人気がない印象があります。実際、住宅広告などで「南向きの好立地」といった表現が目立ち、北向きの土地には日当たりの面で不安を抱かれやすいからです。
しかし、設計士の視点で見ると、土地は方角だけで判断しきれない要素がたくさんあるのも事実です。特に「土地の形状」は、暮らしやすさやデザインの自由度を大きく左右します。

そこで今回は、北向きの土地の活かし方と、家づくりの際に注意したいことをお話しします。

●北向きの土地のメリットと注意点

たとえば、南北の距離が短く奥行きが浅い北向きの土地の場合、建物を建てた際にどうしてもリビングといった生活の軸となる空間に日が入りづらくなりがちです。
一方で、同じ北向きでも奥行きの深い土地であれば、家の中央や南側にしっかりとスペースが確保できるため、日照条件が大きく改善されます。

それに加えて、プライバシーが確保しやすい庭を設けることもでき、暮らしやすさが格段に上がります。この場合、庭と駐車場を別に配置できると、お子様が庭で遊んでいても道路への飛び出しリスクが少なく、安心感が増します。また、家の中や庭での時間も周囲の目を気にせず過ごせるという点でも大きなメリットがあります。
さらに、洗濯物や布団を外に干す場合でも、通行人の視線を避けやすいため、快適な生活環境が整います。

ただし、どんなに奥行きのある土地でも、北向きである以上、特有の課題は少なからず存在します。そのひとつが「外観の整えにくさ」です。
家づくりでは日照を最優先にするために、リビングなどの主要な部屋を南側に配置するのが一般的です。その結果、家の正面にあたる北側には、階段やトイレ・浴室・洗面所といった水回りが配置されるケースが多く見られます。
すると、北側の外壁には大きさや形が異なる窓が点在しやすく、どうしても正面から見た外観がちぐはぐな印象になりがちです。さらに、換気扇やエアコンの室外機、給湯器などの設備も、正面側に集中しやすく、生活感が外ににじみ出てしまいます。

もうひとつ気をつけたいのが、勝手口の位置です。

間取りの都合で北側に勝手口を設けてしまうケースも少なくありませんが、ここが家の正面になる場合は注意が必要です。裏口の象徴ともいえる勝手口が家の正面にあると、住まい全体の印象が雑然としやすくなります。

●固定観念をリセットすると見えてくるもの

こうした懸念を解決するには、間取りの固定観念を一度リセットすることが有効です。

たとえば、「南側にリビングを置くのが正解」という一般的な発想にこだわらず、あえて北側にリビングを配置してみることで、新しい可能性が開けます。

そのうえで、家の中央に中庭を設けるという選択肢を加えると、住まいはぐっと洗練され、快適なものに。中庭によって南側の隣家との距離をしっかり取りながら、リビングの窓を南向きにできるというメリットが生まれます。
これは、北向きの土地で特に重視したいポイントです。

また、中庭があることで、東西からの自然光も入りやすくなり、家全体に柔らかな明るさが広がります。外部からの視線を受けにくいため、リビングの窓を大きく取っても安心ですし、防犯面でもメリットがあります。
さらに、外構工事の際も人目を避けるための塀や目隠しの設置を最小限に抑えることができるため、コスト面でも好影響が期待できます。

加えて、中庭から取り込む光は直射日光だけでなく、天空光や反射光も豊富に含まれているので、天気や時間帯にかかわらず、安定した明るさをもたらします。これにより、リビングはもちろん、水回りや玄関までもが明るい空間になり、家全体の居心地が大きく変わってきます。

このように、北向きの土地は一見ネガティブに捉えられがちですが、奥行きの深さや設計時の工夫次第で、日当たり・プライバシー・外観の美しさをすべて叶えることが可能です。
大切なのは方角ではなく、その土地が持つ個性を活かす視点と、固定観念にとらわれない柔軟な発想ではないでしょうか。
私たちは、お施主様とそのご家族の暮らし方に寄り添いながら、常に最適な提案をしていきたいと考えています。

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