こんにちは、ハウジング山一です。
家づくりを考えるとき、今の暮らしの不便さを解消したいという気持ちは強くなります。
現在賃貸住宅に住んでいる方であれば、「収納が足りない」「子ども部屋が欲しい」といった具体的な要望が出てくるでしょう。しかし、思いつくままに部屋や収納を増やしてしまうと、建築費用が膨らみ、そのまま住宅ローンの重荷として長く家計にのしかかります。
しかも、将来子どもが独立すれば「余った部屋」を持て余すことになる可能性もあるのです。そこで重要なのが「現在」と「将来」の両方を見据えて部屋数を計画すること。
今回は、コストを抑えながら快適な間取りを実現するために、部屋数をどう考えるべきかを具体例を交えてご紹介します。
●部屋を増やすほどコストは跳ね上がる

住まいに部屋を増やすほど、建築費用は加速度的に大きくなります。単純に壁や床、天井が増えるだけでなく、窓・ドア・照明・空調機器などの設備費も比例して必要になるからです。
例えば、部屋を1つ追加するだけで100〜200万円のコストが上がることも決してめずらしくはありません。
さらに、作った部屋はその後数十年にわたり掃除や修繕、冷暖房などの維持費が発生します。つまり「多く作れば安心」という発想は一時的な満足感こそありますが、やがて大きな経済的負担となって跳ね返ってくるのです。
●将来的に余る部屋のリスク
子育て中は「子どものために部屋をたくさん用意したい」と考えがちです。しかし、20年後、30年後には家族構成が変化し、子どもが巣立った後に使われない部屋が残ってしまうケースが多く見られます。
かつての実家を思い返すと「そういえば、使われなくなった部屋がいくつもあった…」という方も少なくないはずです。そのスペースにかけた建築費や税金、維持費がすべて無駄になってしまうと考えると、合理的な判断とは言えません。
したがって、家づくりでは「一時的な家族の最大人数」だけでなく、「将来夫婦二人で暮らす姿」まで視野に入れることが大切です。
●旧来の「客間」と現代の住まい方
昔の住宅には「客間」と呼ばれるスペースがほぼ必ずあり、親戚や来客を迎えるために用意されていました。しかし現代では人を自宅に招く機会が減り、独立した客間を作る必要性は薄れています。
それでも「親が泊まりに来るからもう一部屋欲しい」と考える方は少なくありません。 ただし、独立した客間を作るとコストは確実に上がりますし、使用頻度を考えると非常にもったいない投資です。大切なのは「兼用できる部屋」を工夫することです。
●子ども部屋を1階に置く新しい発想

弊社では、2階建てであっても「子ども部屋は基本的に1階に設ける」ことをおすすめしています。その理由は大きく3つあります。
① 子どもが小さいうちは親と一緒に寝るから
就学前や低学年のうちは子どもが自室で寝ることはほとんどありません。そのため1階に子ども部屋を設けておいても支障がなく、むしろ使い勝手がいいのです。
② リビングの散らかりを防げるから
子どもの荷物はリビングにたまりがちですが、1階に子ども部屋があれば荷物をすぐに片付けやすくなり、リビングがすっきりと保てます。
③ 臨時の客間として使えるから
親御さんなどが泊まりに来た場合、子ども部屋を使ってもらえます。親世代が泊まりに来るのは子どもが小さいうちがほとんどであり、その時期、子どもは1階の部屋を寝室として使っていません。
結果として「子ども部屋」と「客間」を兼用できる合理的な部屋となり、コストを抑えつつ利便性を高めることができます。
●子どもが巣立った後の部屋活用
やがて子どもが独立した後、その部屋は使い道を失うどころか、新たな生活スタイルに合わせて再活用できます。
夫婦の寝室として、書斎や趣味の部屋、在宅ワーク用スペースに使う、将来的に介護スペースやゲストルームに転用など、ライフステージに応じて柔軟に用途を変えられる部屋づくりは、無駄を減らしながら長期的な満足度を高める方法です。
●不要な部屋をつくらない選択

最近は「ランドリールーム」や「特別な収納室」など、便利に見える付加的な部屋を求める方も増えています。もちろん予算が潤沢であれば良いのですが、限られた予算で家づくりをする場合は優先度を慎重に考えましょう。
例えば、洗濯専用の部屋をつくるだけで100〜150万円ほどコストが上がるケースもあります。そのお金を他の部分に回せば、より住み心地や性能を高められるかもしれません。
「必要そうだから」という発想だけで追加せず、家全体のバランスと将来の使い道を考えたうえで判断することが重要です。
部屋数は家の面積とコストを大きく左右します。
将来使わなくなる可能性のある部屋を安易に増やすのではなく、「子ども部屋を1階につくる」など兼用できる間取りを工夫することで、外観・快適性・予算のすべてを無理なく両立できることを知っておいてください。
家族の人数が多い時期だけでなく、将来的な夫婦2人暮らしまで視野に入れて部屋を設計することが、余計なコストを抑え、長く愛せる住まいづくりへとつながります。