こんにちは、ハウジング山一です。
土地選びの際「この土地に対してどれくらいまでの建物を建ててもいいのか」を示す指標として「建ぺい率」というものがあります。そして、私達はこの「建ぺい率」はできる限り目一杯使うほうが、暮らしやすさの観点からは合理的だと考えています。
●敷地に余白を作らない方がいい理由

なぜならば、敷地に余白を多く残すほど、外構工事の施工面積が広くなり、外構にかかる費用が増えてしまいます。さらに庭の手入れや雑草の処理など、維持管理の手間も増えます。
一方、1階部分をできるだけ大きく確保できれば、居住空間や収納をワンフロアにまとめやすく、家事や育児、そして将来の暮らしまで含めて、圧倒的に生活動線が楽になるのです。
洗濯や片付け、掃除といった毎日の作業も、階段を上り下りしなくて済む「水平移動中心の住まい」となるだけで負担が軽減されます。収納が上下階に分かれているよりも、同じフロアで完結している方が片付けの効率も格段に上がります。つまり、無理に敷地を余らせて外回りにコストをかけるより、空間を有効に使い切る設計のほうが、日々の暮らしにとってずっと賢明なのです。
●建ぺい率を限界まで活かすために
ハウジング山一では、先にお話しした理由から、平屋ではない場合もできるだけ1階部分を広く設計することを心がけています。ただし、そのためには「常識」と思われている価値観にとらわれない柔軟な発想が欠かせません。
・家づくりの邪魔をする常識とは
多くの方が「南向きの土地=価値が高い」と考えています。これは一部正解ですが、すべての方にとっての正解ではありません。
たとえば、将来的に土地と建物を売却する予定がある場合、南向きの土地は確かに高値で売れやすく、資産価値が下がりにくい点で優位です。しかし、長く暮らすつもりで家を建てる場合は、必ずしも南向きが最善とは言えません。
なぜなら、南向きの土地にこだわるあまり、全ての部屋を南向きにして大きな窓を設けようとする傾向があり、それが結果としてコストの増加、使いづらさ、さらには耐震性能の低下を引き起こすからです。

まずプライバシーの確保のためにカーテンや目隠しフェンスなどへの追加コストが発生します。防犯性を高めようとすればシャッターや塀、門まわりにもコストがかかります。さらに、すべての部屋に十分な日当たりを確保しようとして2階建ての設計になれば、外構面積が増え、庭や駐車スペースにも余分な費用がかかります。しかも南向きの土地自体が高額という事実もあります。
設計上の使いにくさも無視できません。
南向きにこだわることで2階建て前提の間取りになり、生活動線が上下に分断される結果、洗濯や掃除、片付けといった日常の動きが複雑になります。さらに耐震性の面でも、1階と2階の壁の配置バランスが崩れやすく、特に南北での壁量バランスがわるくなる傾向があります。耐震等級の基準値を満たしても、実際の強さのバランスが悪ければ安心とは言えません。
このような理由から、長く住み続ける家を求める方こそ、「南向き信仰」から少し距離を置くことをおすすめします。
●日当たりは設計でつくる
多くの方が「直射日光が入らなければ家は暗い」と考えがちですが、実際に室内を快適に照らす光は「天空光」と呼ばれるやわらかな拡散光です。天空光は大気中の塵や水蒸気によって反射・拡散された光で、直射光のように天気に左右されず、常に安定した明るさをもたらします。

つまり、全ての部屋に直射日光を求める必要はなく、天空光で十分明るく保てる部屋と、直射光を取り入れたい部屋をうまく分けて設計することが重要です。この考え方さえ理解していれば「この土地では平屋は無理」とあきらめていた敷地でも、設計の工夫次第で明るく開放的な平屋を建てることができます。
そして平屋にすることで、建築コストを抑えながら使いやすく、耐震性にも優れた住まいが実現します。
暮らしやすさや日当たりの心地よさは、土地に左右されるものではなく、あくまで“設計の力”で決まるものなのです。
土地に答えを求めるのではなく、設計に解を見出す。これこそが、長く安心して暮らせる家をつくるための本質だと私達は考えます。